2012年2月8日

映画『オレンジと太陽』のあらすじなど

「英国最大のスキャンダル」という“児童移民”の真相を明らかにしようと取り組んでいるマーガレット・ハンフリーズさんの姿を取り上げた映画『オレンジと太陽』の試写会が都内で開催されました。

 19世紀から1970年代まで行われた強制移民で、13万人の児童が、親の承諾を得ずに、あるいは、だまされるなどして、イギリスからオーストラリアへ送られました。そこでは毎日、太陽が輝き、毎朝、オレンジを食べるんだと言われ船に乗せられた児童たちを待ち受けていたものは、虐待と搾取と「泣くことを忘れた」日々でした。原作は『からのゆりかご――大英帝国の迷い子たち――』(原題:EMPTY CRADLES/マーガレット・ハンフリーズ)。2009年にオーストラリア首相が、2010年にイギリス首相が政策として行われていたことを公言のうえ正式に謝罪しました。

 本作は、若い未婚の母親と赤子が引き離される場面から始まります。時代が1986年に飛び、養子に出された人たちのケアのための集団カウンセリング会場で、ソーシャルワーカーのハンフリーズは、ある参加者から、弟がオーストラリアへ移民していたことを聞きます。親の承諾なしに移民できるはずがないと信じなかったハンフリーズですが、ロンドンのオーストラリア大使館に行くと、「ここには資料はない」「英国政府に聞いてくれ。彼らがやったことだ」とつれない対応をされました。調べていくうちに、新聞広告などを利用して助けを求めていたにも関わらず、表ざたにはなっておらず、ようやく見つけ出した資料を運んできた職員に、どうして今までだれも知らなかったのかを尋ねると、「管轄ではないのでわからないが」「誰も興味がなかったのでは…」と、うつむきながらの返事。

 印象に残っている場面があります。ハンフリーズがプロジェクトのリーダーとして実態調査を始めてのち、マスコミを通じて各界に影響が出始め、ハンフリーズと夫が諮問会に呼び出されました。宗教界も含めた諮問者たちに、ハンフリーズは、「聞いて、みんな自分が誰なのかを知りたいだけ」と叫びました。それぞれの「思惑」や「責任」や「責務」を背負った人たちでしたが、多くが、思いつめた表情でうつむいたように見えました。

 本作は、登場人物たちの表情、例えば、諮問委員や、ラジオのパーソナリティーや、神職者たちなどの表情が、言葉では説明することができない何がしかを訴えかけてくる作品でした。社会には、「真実」などというものは存在せず、人間存在に「正解」というものはないのかもしれません。ただ、だからこそ、「ミッション」というものが尊いのかもしれないと思わせてくれる作品でした。


『オレンジと太陽』
原題:Oranges and Sunshine
監督:ジム・ローチ
脚本:ロナ・マンロ
出演:エミリー・ワトソン、デイヴィッド・ウェナム、ヒューゴ・ウィーヴィング
製作:2010年/イギリス
時間:106分

竹内みちまろ

 

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